神様と私
先日、いつも通りバスに乗った時のこと。
私がバスに乗る時というのは、時間帯的にいつも大概空いていて座れることが多い。私は前から2番目の席が好き。バスの車種にもよるけど、前から2番目の席は前との間隔が広く、脚を伸ばしやすいのだ。
そんな2番目の席がたまにピンク色の妊婦優先席になっていることがある。今までなら、好きな2番目の席だけど優先座席だからと座らなかった。でも妊娠した最近は、空いてたらたまに座る。
その日も、たまたま2番目の妊婦席が空いていて、そこに座ることにした。すると、座った瞬間に何か後ろから声がした。
「 와~ 예뻐! 너무 예뻐! (わぁ〜きれい！すごく綺麗！)」
私の後ろの席に座っていた、何だかオーラのある上品そうなおばあさんがこちらを見ながら言っていた。誰に向かって言ってるのかわからず、私の前を見てみたが誰もいない。どうやら私に言っているようだ。
私がマタニティマークをつけて妊婦の優先座席に座ったからかなと思った。というのも、韓国では妊婦や子連れはやたら話しかけられるイメージがある。
ところがどっこい。
そのおばあさんは、私の服を掴んで生地をまじまじと見ている。「本当に綺麗ね！これは何の花かしら」と言いながら。
そう。私がその時きてた服は小花柄のワンピース。
服かーい！ってなったわ笑。
そこから、おばあさんの話が色々始まる。さっき公園で紅葉を見てきたんだとか、たわいもない話。でも途中から、韓国語が聞き取れなかったり、バスの騒音で声自体聞こえなかったり、何よりも、ずっと後ろ向いてたら車酔いして少し吐き気が...
そのうち、お年寄りの方特有の"こちらに向かって言ってるのか、独り言なのかわからない"感じになっていったので、私は微笑みながらそのまま前を向きフェードアウトさせてもらった。
でも私はこういう時いつも思うことがある。
お年寄りに道を聞かれた時もそうだけど、"この人は、人間の姿に化けた神様なのかもしれない。だから私は今、お年寄りに優しく接することができるかどうか試されてるのかもしれない。ここでの態度によって、今後の運命が左右されるのではないのだろうか..."と。
大袈裟笑。
そんなことを思いながらも、今回のように最後までちゃんと対応しきれないことも多々あり。だから私はこんな人生を歩んでいるのかもしれないなぁなんて笑。
結局、そのおばあさんよりも私が先に降りたのだが、降りる時も仏様のような笑顔で手を振ってくれた。"もう絶対神様やぁ〜ん"って思った私は、車酔いの吐き気を押し殺し、こちらも満面の笑みでお辞儀をしてバスを降りた。
何だか変な感覚に襲われながらも、とりあえず外の空気を吸って深呼吸。車酔いは少しおさまった。そのまま目の前の横断歩道で信号待ちをしてたら、また声をかけられた。
次は、登山服を来たおじいさん。「お腹が空いてるんだけど、1000ウォンだけもらえへんやろか」と言っている。たまにいるこういう類いの人はあまり相手にしなくていいと聞いたことがあるので、「外国人なのでよくわかりません」と答えた。
宗教の勧誘をされた時にも使えるこのフレーズ。外国人だとわかると、話が通じないと思われ、一瞬で諦めてもらえる。このおじいさんも、残念そうに「あ〜そっか...」と言いながら去って行った。
ここで私はまた思う。
"このおじいさんも神様なんかな。神様やったらどうしよう。また試されてるんかな。1000ウォンもあげられないなんてって思われるんかな..."
後ろを見てみると、何人か人はいるのに、他の人には何も話しかけず歩いて行くおじいさん。
"え。なんで私だけなん。やっぱ試されてる？というか、私にだけ見えてる？やっぱり渡した方がいいんかな。え〜どうしよう"
そうこうしてるうちに、おじいさんは見えなくなり、私も信号が変わり横断歩道を渡った。
"おばあさんといい、おじいさんといい、ふたりが本当に神様だったとしたら、私の対応は完全にアウトやな...。これから掴めるはずだったチャンスを逃すことになるんかな。それとも何か不幸なことが舞い込むんやろか..." てな感じで、その日は少しモヤモヤが残った。
そして、この話を夫や友達に話したら、そんなわけがないと笑い飛ばされて終わった。
でも私はまだ心のどこかで、やっぱり神様だったんじゃ...と思っている。少しね。少しだけ。
ひょっこりふぃる笑。"かわいい"を日々更新中。癒し^^
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